秋田の農産物を生かした地ビールづくり
「羽後麦酒」
センスと遊び心がキラリと光るクラフトビール醸造所
文責:古庭屋商店・小林茂和 最終更新日:2019.10.07













秋田県南部にある羽後町は、町内に電車の駅はありません。走るバスも隣町からやってくる1日9本の1路線のみ。積雪は2mを超え、特別豪雪地帯に指定されるほど過酷な冬の環境。
お世辞にも良いとは言えない交通の便、地勢や天候などの自然条件にも恵まれず、ゆえに産業も育たず、若い人が離れ、高齢化・人口減少が進むこの小さな町に、「この町だからこそ出来ることがある!」と2017年6月にクラフトビール会社が誕生しました。
人口減少について少々説明を加えさせていただくと、私たちが住む秋田県の人口減少率は-1.47%(※1)と全都道府県の中で青森県を抑えて全国ワーストという事実があります。その秋田県の中でも、羽後町は秋田県全体の数字を大きく上回る-2.37%(※2)という人口減少率。つまり、羽後町は、日本が抱える地域問題の先頭集団をひた走っているのです。
さて、人口というビジネスの基盤が今後10年で20%以上失われることが明白なこの羽後町で、さらに、夜中まで営業している居酒屋さんは町中見渡しても片手で十分に足りてしまうという過酷な環境を理解しつつ、地元密着の地ビール会社を作ろうというのだから、鈴木社長、ロックンロールな男です。
※1 総務庁調査 2018年10月1日現在 / ※2 秋田県企画振興部調査統計課 市町村別人口増減率 平成30(2018)年

元バンドマン、鈴木社長
ベースを巨大なしゃもじに持ち替えました。
「豪雪」という過酷な自然条件を抱える羽後町ですが、反面それは豊かな水資源を意味します。そして、昼夜の寒暖差が大きいという気候条件と出羽丘陵の肥沃な大地が、豊かで美味しい野菜やお米、果樹などの農産物、山菜やキノコなどの山の恵みを育みます。羽後麦酒ではこれら大地の恵みを地元の農家さんから仕入れて、この町ならでは、秋田ならではのクラフトビールを醸造しています。
そう、羽後麦酒のビールはクラフトビールファンの舌を楽しませるだけでなく、地元羽後町、秋田の農家さんへの、鈴木社長の精一杯の応援歌でもあるのです。

スイカ、ブルーベリー、菊のビール
これまでにリリースされたのは、羽後町名産のスイカや、ブルーベリー、イチゴを使ったビール。その他、酒米の山田錦や、春にはふきのとう、夏には菊、秋には桃等々、「本当にビールの原料なの?」といった農産物の名前が並びます。2019年秋以降には、トマトや枝豆のビールなどもリリースを控えています。
こうしたクリエイティブな試みは、1回のバッチ(仕込み量)が約100リットルというマイクロブルワリーの羽後麦酒ならでは。また、地元の農産物を積極的に使うことで、秋田を、羽後町を元気にしようという鈴木社長の目の奥で光るパブリックな情熱によって生み出されます。

農家が元気になれば、町全体が元気になる。

醸造所は旧家の土蔵を改良して利用
写真はリノベーション前の土蔵2階
さて、それでは羽後麦酒の定番商品をご案内します。定番商品ゆえにクラフトビールの王道を行く品揃えですが、まずはこちらの定番商品から味わっていただくのが本筋かと思います。これらをご賞味いただき、羽後麦酒の実力をご理解いただいた上で、クリエイティブなビール群もお楽しみいただけたら幸いです。

ペールエール「PA 001」
クラフトビールの入り口として味わっていただきたいとの思いからやさしい味わいに仕上げました。ゆったりとした時間にゆっくりと飲んでいただきたいビールです。ペールエールだけではありませんが、ビールも醸造酒ですから、温度変化による味の変化も楽しんでください。

ゴールデンエール「GA 001」
厳選してブレンドした麦芽に、羽後町の指定農家に育ててもらったあきたこまちを使用することでスッキリとした味わいに。クラフトビールならではのフルーティーさも感じていただけます。

ベルジャンホワイト「BW 001」
ベルギーで古くから作られてきたスタイルのビール。オレンジピールとコリアンダーを使い、白濁した色とフルーティーな味わいが特長。ビールが苦手な方や女性にぜひ飲んでいただきたいビールです。