天日干し。だから旨い。

「はさがけ」工程の一部始終

稲架結いから脱穀までをご紹介します。

はさがけ米の作り方。
はさ結いから刈取り、天日乾燥まで

文責:古庭屋商店・小林茂和 写真:古庭屋商店・小林茂和 最終更新日:2019.10.19


はさがけ米とは…?

秋田では9月も後半になるとそれぞれの田んぼで稲刈りが始まり、いよいよ稲作におけるクライマックスです。「稲架掛け(はさがけ)」とは、巨大な梯子状の稲架に稲を掛けて天日干しにする工程のことをいい、これを行うことでお米が追熟し、また天日干しによる無理のない乾燥方法のため、炊いた時のお米の美味しさが違う、と言われています。
このはさがけですが、最近はこの方法を選択する農家さんも少なくなり、はさがけの風景も失われつつあります。その理由は、はさがけの副産物である「藁(ワラ)」が生活必需品でなくなったことと、はさがけよりも時間も労働力も圧倒的に少なくて済む稲刈り方法が主流になったことが挙げられます。
それでは、はさがけがどうやって行われているか、一部始終をご紹介します。

はさがけのための稲架を結う農家さん

はさがけのための稲架を結う農家さん

はさがけの準備「はさ結い」

9月も10日を過ぎた頃になると、はさがけを行うお米農家さんでは「はさ結い」が始まります。地面に突き立てられた支柱となる木は一度設置したら一年中そのままです。この辺り(秋田県羽後町)では丈夫で腐りにくい栗の木が使われますが、それでもやがて腐ってきますので、まずは腐った縦木がないか、確認します。

腐った縦木は一度抜き取ります

腐った縦木は一度抜き取ります

腐るのは意外にもこの部分

腐るのは意外にも、
土との境目の部分

長さが十分にある場合は、チェンソーで切断します

縦木の長さが十分にある場合は
チェンソーで切断して再利用します

縦木を元の状態に戻します

縦木を元の状態に戻します

この縦木と縦木の間に稲を掛けるための横ボケを渡していくのですが、これが大変な重労働です。渡す横ボケは7本ですが、手が届くのは下から2本目まで。3本目からは台や梯子を使います。、最後は稲架に足をからませて体を固定して横ボケを固定します。一本の長い横ボケを一人で設置していく達人もいますが、通常は二人での共同作業。家族総出で稲刈りを行っていた昔ならいざ知らず、今となっては人出の確保も厳しい状況です。この人出を確保できなくてはさがけを辞めていく農家さんもいるのです。

1段目、2段目はまだ楽ですが…高くなるにつれ危険が伴う重労働に

1段目、2段目はまだ楽ですが…高くなるにつれ危険が伴う重労働に

最上段は結構な高さ

最上段は結構な高さ

日が暮れかけてもまだ作業は続きます

日が暮れかけてもまだまだ作業は続きます

刈り取りの直前の用意

はさがけを行う農家では、稲の刈り取りにバインダーという機械を使います。田んぼの四隅は機械がうまく入らないないので、事前に手作業で刈り取っておきます。

モミの状態を確かめます

モミの状態を確かめます

四隅を手作業で刈り取ります

四隅を手作業で刈り取ります

次の隅を刈り取ります

一隅刈ったら次の隅を刈り取ります

刈った稲は稲架に掛けます

刈った稲は稲架に掛けます

バインダーで稲刈り

稲刈り用機械、バインダー

はさがけ用の稲刈り機「バインダー」

はさがけは「バインダー」(上の写真ご参照)で刈り取ります。刈り取りと同時に稲束を麻紐で縛ってくれます。縛られた稲束は、横にポンッと放り出されます。しばらくすると放り出された稲束が連なり、田んぼは下の写真のような光景になります。

バインダーで稲刈り中の風景

刈って縛られた稲束が並ぶ、
バインダーでの稲刈り風景

稲束を拾い集めます1

田んぼに放り出された稲束を
一つ一つ手作業で集めます

稲束を拾い集めます2

結構な重労働…
年をとっても元気な理由がわかります

こうして刈った稲束を集めながら、(二人以上いる場合は)同時進行で稲束を稲架に掛けていきます。

さぁ、はさがけ本番!

こうして集めた稲束を稲架の元へと移動させます。途中で抜け落ちた稲穂も拾いながら一粒残らず集める気分で。子供の頃に母親に「お百姓さんが苦労して作ったお米なんだから、米粒も一粒残さず食べなさい!」と怒られたのを思い出します。

はさがけ風景

集めた稲束を稲架の元へと移動し、
一つ一つ丁寧に掛けていきます

はさがけの風景2

稲架の一番上までビッチリと、
稲穂の部分は重ならないように

稲架の最上段は結構な高さ

稲架の最上段は結構な高さ
軽トラと比べるとよく分かります

はさがけ完了

はさがけ完了
このまま約二週間、天日乾燥させます

稲架に掛ける作業はこれで完了。
これで一息つけますが、天日乾燥後には掛けた稲束を下ろす作業が待っています。まだまだ作業は続きます。

天日干し、自然乾燥

天候によりますが、稲架に掛けてから2週間〜3週間、しっかりと乾燥させます。水分量の目安は15%程度。すべてはお天道様しだいの昔ながらの乾燥方法です。お米に負荷をかけずにゆっくりじっくりと乾燥させることで過乾燥や、割れ・欠け、味の低下を防ぎます。また、逆さに掛けて天日乾燥している間に、葉や茎に残っていた養分もモミ(お米)へと集まって後熟(実り)が進み、ご飯を炊いた時の艶(ツヤ)や味を豊かにします。

もう一つ、大事なこと。コンバインで刈り取ると乾燥機での機械乾燥が必ず必要ですが、稲架掛けによる乾燥の場合は天日と風による自然乾燥のため、乾燥にかけるエネルギーを最大限抑えることができます。乾燥機を動かすための電力を必要としないサステイナブルな乾燥方法です。

お米を天日乾燥中

はさがけによる自然乾燥は、
お米に余計な負荷をかけません。

ゆっくりじっくり天日乾燥中

はさがけによる自然乾燥は、
地球環境にも余計な負荷をかけません。

はさがけ中のお米

昔ながらの天日と風による自然乾燥。この田代村でもはさがけ風景は減ってきています。

天日による自然乾燥中の稲(お米)

水分量の目安は15%程度。
時間をかけてゆっくり乾燥させます。

いよいよ脱穀です。

さて、十分に乾燥したら脱穀です。ハーベスターという名前の脱穀機を田んぼ端に持ち込んで、家族・親族・知り合いなど皆で作業します。稲を下ろして、脱穀機まで運んで、モミ(お米)や稲ワラを軽トラックに積んで、と高所作業や力作業が多く大変ですが、皆で協力して一体感が生まれる楽しいひと時です。

はしごに登って稲を下ろします。

高いところに掛けた稲は、
はしごに登って下ろします。

稲架に登って稲を下ろします。

こうして稲架によじ登って稲を下ろす方法も。
秋田の母さん、元気です。

稲架によじ登り稲を下ろすお母さん。

高所作業で危ないですが、
稲を下ろすのは女性の役割。

ハーベスターで脱穀します

脱穀機(ハーベスター)での脱穀風景。
稲ワラの粉塵が舞うのでマスクは欠かせません。

ハーベスターでの脱穀風景

運ばれてきた稲をひたすらに脱穀機へ通します。

モミ(お米)はここに貯まります。

脱穀されたお米(モミ)は写真中央部の袋に。これを移動させるのが重いのです。

稲ワラを軽トラックに積みます

稲ワラも大切な資源。牛の餌や敷ワラに。
稲作農業に捨てるところはありません。

軽トラに積み込まれた稲ワラ

軽トラに積み込まれた稲ワラ。
積み込むのは男の仕事。